こんにちは。
全国通訳案内士試験対策講師の森啓成(モリヨシナリ)です。
全国通訳案内士として活動していく上において、密接に関係してくる現状の日本のインバウンド観光に関する政策についてです。
少子高齢化が進む日本にとって、観光は重要な成長産業であり、国の最重要課題の一つとして観光立国を目指すのは自然な流れです。2025年6月30日時点での主な取り組みとしては、以下の点が挙げられます。
目次
- 🔸観光立国推進基本計画(第4次、2023年~2025年度)
- 🔸2025年時点の具体的な動向

🔸観光立国推進基本計画(第4次、2023年~2025年度)
現在、日本は「観光立国推進基本計画」に基づいて観光振興に取り組んでいます。特に2025年は、大阪・関西万博が開催される年でもあり、この計画の最終年度として重要な位置づけにあります。この計画のキーワードは「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」です。
観光立国推進基本計画 | 観光政策・制度 | 観光庁www.mlit.go.jp
交通政策審議会観光分科会(第50回)を開催します ~観光立国推進基本計画の改定について~ | 2025年 | 報道発表 | 観光庁www.mlit.go.jp
具体的な目標と取り組みは以下の通りです。
- 持続可能な観光地域づくり戦略
- 地域住民の理解を得ながら、地域の自然や文化の保全と観光を両立させる「住んでよし、訪れてよし」の地域づくりを推進。
- 持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数を増やし、国際認証・表彰地域の増加を目指す。
- 観光地のスマート化と高付加価値化を進め、地域経済への還元を強化。
- オーバーツーリズムの未然防止や混雑分散策の強化。
- ユニバーサルツーリズムやユニバーサルデザインの推進など、バリアフリー化の重要性が強調されている。
- インバウンド回復戦略
- 訪日外国人旅行消費額の早期5兆円達成(令和元年実績:4.8兆円)を目指し、2025年までにさらなる拡大を図る。
- 訪日外国人旅行消費額単価の増加(令和元年実績:15.9万円から20万円へ)。
- 訪日外国人一人当たり地方部宿泊数の増加(令和元年実績:1.4泊から2泊へ)。
- 訪日外国人旅行者数の令和元年水準超え(令和元年実績:3,188万人超え)を目指す。
- 高付加価値なインバウンドの誘致(富裕層向け観光コンテンツの開発など)。
- 航空ネットワークや二次交通の整備に加え、日本版ESTA(電子渡航認証システム)の導入前倒しによる訪日客の利便性向上。
- 大阪・関西万博を契機とした全国各地への誘客戦略の推進。
- MICE(会議、研修旅行、国際会議、イベント)の誘致・開催の促進。
- 国内交流拡大戦略
- 国内旅行消費額の早期20兆円、2025年までに22兆円達成を目指す。
- 国内旅行の実施率向上、滞在長期化。
- 日本人の地方部延べ宿泊者数の増加(令和元年実績:3.0億人泊から3.2億人泊へ)。
- ワーケーションや「第2のふるさとづくり」の推進。
- 国内旅行需要の平準化(特定の時期に集中しないよう分散を促す)。

🔸2025年時点の具体的な動向
- 訪日外国人旅行者数: 2025年5月の訪日外客数は369万人を超え、5月として過去最高を大幅に更新しています。JTBの予測では、2025年の訪日外国人客数は2024年を超える4020万人と推計されており、増加基調は維持される見込みです。
- 大阪・関西万博: 2025年4月13日から開催される大阪・関西万博は、訪日外国人の大きな誘客の機会と位置づけられています。万博協会は会期中の想定来場者数を2,820万人、そのうち約350万人が訪日外国人客と見込んでいます。
- 「数から質へ」の転換: 単なる人数増加だけでなく、一人当たりの消費額や地方での宿泊数を重視し、観光の「質」を高める方向性が強調されています。
- 次期「観光立国推進基本計画」の検討: 2026年度からの第5次計画策定に向けた議論が始まっており、「2030年訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円」という高い目標達成に向けた施策が検討されています。分散化や満足度の測定にNPS(顧客推奨度)導入などが提案されています。
- 観光産業の人材確保・育成: 観光産業の人手不足や低賃金といった課題に対応するため、国土交通省が退職自衛官の宿泊業への再就職を後押ししたり、観光産業の収益力・生産性向上による従事者の待遇改善を目指す取り組みも行われています。
このように、日本は少子高齢化社会における経済成長の柱として、観光を強力に推進するための様々な取り組みを官民一体となって進めています。

以上