作成日: 2021/3/3
🟣通訳ガイドがノウハウ伝授
03月02日 19時14分
●記事URL
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20210302/7000031293.html
🟣日本を訪れる外国人観光客に付き添って観光地を案内する「全国通訳案内士」という仕事があります。
「通訳ガイド」とも呼ばれ、外国語の能力はもちろん、日本の歴史や地理、文化の知識も問われる国家資格で、いわば日本のおもてなしのプロです。
新型コロナウイルスの感染拡大でガイドとしての仕事が激減してしまった今、これまで培ってきた「外国人のおもてなし」のノウハウを別の形で広く観光業界のためにいかそうという取り組みが始まっています。
札幌放送局の芳川隆一アナウンサーが取材しました。
【外国人おもてなしのスペシャリスト】
全国通訳案内士の飛ヶ谷園子さん(41)は、海外の旅行会社などから依頼を受け、これまで、ヨーロッパや東南アジアなど世界各地から北海道を訪れる観光客の案内をしてきました。
日本の歴史や地理を正しく理解してもらうためにふだんから勉強を欠かさないことはもちろん、ツアーの前には目的地についての入念な下調べも行います。
さらに、宿泊施設でのチェックイン時のサポートや温泉の正しい入浴方法の説明など、外国人旅行者が日本で快適に過ごせるよう、あらゆるサポートも行うといいます。
「お客さんに日本滞在を楽しんでもらうお手伝いをするために、何を聞かれても答えられるようにしておきます」と話す飛ヶ谷さん。
まさに外国人おもてなしのプロフェッショナルです。
【ノウハウをいかす新たな場】
これまで、多いときには年間500人以上の外国人旅行者を案内してきた飛ヶ谷さんですが、新型コロナウイルスの感染拡大で、去年4月以降は通訳案内士としての仕事は全くできていません。
そこで、この冬、飛ヶ谷さんが新たに挑戦したのが、ホテルや旅館など道内の観光関係者向けに、英語による接客方法などを伝える研修会に講師として参加することです。
研修会はコロナ後を見据えて外国人旅行者を受け入れる態勢をより整えてもらおうと、観光庁がことし新たに始めた取り組みです。
実はこれまで、日本の宿泊施設の接客方法などについて外国人観光客から様々な意見や感想を聞くことが多かったという飛ヶ谷さん、「今までの経験をいかして、こういう時にはこういう言い回しが大切だよとか、自分の考えている事をお伝えする良い機会だなと思いました」と、講師になったきっかけを話します。
先月、網走市で開かれた研修会には、地元ホテルや観光協会、自治体などからおよそ20人が集まり、接客に役立つ英会話などを学びました。
【プラスアルファのひと言で暖かいおもてなしを】
集合研修の後、飛ヶ谷さんは網走湖のほとりに建つリゾートホテルを訪れ、研修の一環として個別にアドバイスを行うことにしました。
毎年1月から2月にかけては流氷を見ようと多くの外国人宿泊客が訪れ、宿泊客全体のおよそ7割を占めるというこのホテル、従業員に案内されて館内を巡る飛ヶ谷さんがまず足を止めたのが、入浴施設に入るための玄関です。
他人とスリッパを共有することに特に抵抗がある外国人のために、識別のためのタグがあることをしっかり説明することが大切だといいます。
英語に自信がない従業員に対しても「これをスリッパに付けますよと、タグを手に持って示すだけでも良いかと思います」と、しっかり説明することの大切さを強調します。
さらに、温泉のお湯についてひとこと説明を添えるだけでも、外国人宿泊客が抱く印象は大きく変わるといいます。
研修に参加した従業員も「マナーだけでなく、それにプラスしてひとこと説明があることが大切だと分かり、すぐに実践でも使えると感じました」と話し、学びの多い研修だったようです。
【コロナ後を見据えて】
新型コロナウイルス感染拡大前に観光庁が外国人旅行者を対象に行ったアンケートでは、日本滞在中に何に困ったかという問いに対して、ホテルや観光施設などの人たちとのコミュニケーションという答えが3年連続で最も多かったそうです。
飛ヶ谷さんは、コロナ禍の今こそ、観光業界全体の連携が大切だと考えています。
「観光業界全体で協力してレベルアップをしたいと常々思っていたので、皆さんの熱意を見て、私ももっと頑張って、いろんなお手伝いができたら良いなと改めて思いました」。
今回の研修は先月で終わりましたが、今後も、外国人おもてなしのスペシャリストである通訳案内士のノウハウが広くいかされる機会は多いと感じます。
🟣観光経済新聞記事