せとうち島旅ガイド(瀬戸芸公式ツアーガイド) – 2019.5.23. 宇野港、犬島コースのガイドを終えて感じたこと –

2019/5/23 (木)

今日は朝から晴れ。チャーター船で宇野港と犬島を巡るコースのガイドを担当した。

天気は快晴、せとうちブルーが映える中、現場側および参加者もナイスな方々が揃いベストな状態でのガイド対応となった。

日中は気温が30度を超える夏日和だったが、体調を崩される方もなく皆さんのおかげで、無事にツアーを終えることができた。感謝の気持ちでいっぱいだ。本当に有難うございました!

■高松港 → 宇野港 → 犬島 → 高松港。わたしのグループは、半数以上が外国人の方(台湾、香港、フィリピン)で日本語と英語、中国語でのガイド対応となった。この瀬戸芸の参加者の方を見ていると本当に、 アートに国境はない、ということを感じさせられる。人間が感覚的に良いと感じるものに人種など関係ないのだ。良いものは良いのだ。そこに理屈などないのだ。

🔷ガイドとアート作品

ガイドにとって、アート作品をハード※とすると、当たり前だが、ハード(作品)は変えられないが、ソフト(人的要素: ガイド技術、話術、意識、情報量など)と見せ方や鑑賞者の視点は変えられる。 あえて誤解を恐れずに生意気なことを書かせてもらうと、ハードをどう料理するかはガイド次第なところがある。特に見た目だけではよく理解できない作品の場合、ガイドの説明の膨らませ方や魅力の伝え方によって鑑賞者の作品に対するイメージや評価が180度変わってくる。要はプレゼンの仕方が肝心なのだ。

芸術作品を鑑賞する際、作品を理解する必要はない、作品から何かを感じることが大切だという人もいる。自分もその意見には賛成だがガイドとして解説を求められたときはやはりプロとして鑑賞者に分かりやすく納得のいく説明ができないといけない。鑑賞前に説明しすぎると見る側はどうしても先入観を持って作品を鑑賞してしまい作品と初めて対峙するときの自分自身の第一印象が他人に左右されてしまう。鑑賞前にどのくらい説明するかのバランスも作品によって変わってくる。

現代アート作品の場合、一見してよく理解できないものも多い。そのような作品を生かすも殺すもガイドの腕次第なところがある。だから芸術祭のガイドの役割と責任はとてつもなく大きい。ガイドは、作家の方や作品と鑑賞者の間の橋渡し役となる重要な役割を担っている。

見た目は良く理解できない作品でも、その作品ができるまでには作家の方の思いやバックボーンとなるストーリーが必ずある。ガイド用の原稿を作っていて思うことは、今やSNSが発達し、多くの作家の方も情報発信のツールてしてTwitterやFacebookなどを使っているのだから、礼儀をわきまえた上でSNSを通して作家にコンタクトをとり、ガイドとして作品説明をするという理由で、制作意図や想い、伝えたいことなど疑問点を直接教えてもらうのもひとつの手段ではないかと思う。もちろん自分で相当努力して調べたがどうしても不明な点が残るという場合だが。。。

※「ハード」とは、施設や設備、機器、道具といった形ある要素のこと。これに対し、人材や技術、意識、情報といった無形の要素のことを「ソフト」という。一般的に、「ハード」という箱のなかで「ソフト」が動く(働く)が、何をハードとし、何をソフトと言うのかは職種や現場によって異なる。

🔷ガイドにおける二カ国語対応

今回、瀬戸芸公式ツアーでガイドを務めた際、毎回、外国人の方が参加されており、英語と日本語、或いは中国語と日本語で対応した。やり方としては、まず日本語で説明し、ほほ同じ内容を外国語で説明するという方法だ。

思うことは、二カ国語対応するとどうしても制限時間の関係で内容が浅くなり、顧客満足度が落ちるのでは!?ということだ。どちらか一方の参加者の方々は、外国語を聞く時間が毎回入ってしまい集中力が落ち、ダレた雰囲気になることがある。

ガイドとしても場を作って盛り上げていくのが難しくなる。そこが通訳ガイドの腕の見せ所と言えばそうなのだが。。。 話す際、盛り上がりの場面を違う言語で二度作ることになり、笑っている方々とその外国語の説明を待っている方々が同時に存在することになり演出のリズムがとりにくい。小さい盛り上がりの山が何回も続き、そのまま大きいヤマ場を迎えずにツアーが終わってしまい可も不可もない印象の薄いツアーとなってしまいがちだ。

ツアーの品質としても一カ国語対応のツアーに比べて低くなり、内容が薄くなるぶん、もしかすると、リピーターの増加や参加者の口コミによる集客に繋がりにくいのではないかと思うことがある。(まあ、ツアーはチャーター船による移動の利便性やランチ、値段などを含めて総合的に判断されるが。。。)

かといってひとつの作品説明にかけることができる制限時間をカバーするため二倍の速さで二カ国語対応すれば良いのというと、そんな単純な話しでもない。抑揚や間、相手の顔や呼吸をみながら話さないと伝わりにくい。メッセージが伝わらないと説明する意味がない。録音したテープのような説明では、聞く側は、馬耳東風になってしまう。理想的には日本人グループと外国人グループに分けてツアーを催行できればベストだが、そんなに都合よく参加者の方の国籍と人数は分かれないし、収益性の面から言っても難しい。

二カ国語対応するガイド内容の商品価値をいかに一カ国語対応のレベルに近づけるかが、ひとつの課題だと感じている。育ってきた環境や文化背景、思想、笑いのツボが違う外国人の方々には、日本人に対する説明とは違う内容を話さないと伝わりにくい、相手に分かりやすい例え話を混じえながら説明しないと理解してもらえない場合も多い。こういう点は実際に二カ国語対応のガイド経験をした者でないと難しさは分からないだろう。

大きさや長さ、高さなどの説明ひとつとっても相手の国にある有名なものを比較対象にあげないとサイズ感が伝わらないことが多い。また歴史を説明する際の年代は世界史の大きな出来事をあげないとピンとこないし、国によって度量衡の単位が違う場合は換算してあげないと伝わらない。

塩田なら塩の作り方、柿本人麿呂や三島由紀夫、政石蒙がモチーフの作品ならどんな人物なのか、屋島の合戦ならどんな意味を持った内戦だったのか、瀬戸内海はどうして島が多いのか?、沙弥島と瀬居島の名前の由来なら三味線とはどんな楽器なのか、男木島と女木島の名前の由来なら那須与一が弓矢で扇を射る話し、盆栽とは何か?、チヌはどんな魚なのか? など挙げればきりがないが、日本人なら説明なしでも分かってもらえるようなことを一から説明しないと伝わらない場合が多く説明にも時間を要する。

まあ逆に言えば、こういうチャレンジングな部分があるから通訳ガイドは面白いのだとも言える。文化や考え方のギャップを埋めていき相手に異文化を理解してもらうのが通訳ガイドの役割とも言える。


🔷宇野港

宇野港は、相変わらず淀川テクニックさんの宇野のチヌと真庭のシシの存在感が半端でない。VIVID な色使いがせとうちブルーに映える。

宇野のチヌは、個人的に作品制作に参加していたため、作品説明にも気持ちが入る。言葉を発する際、気持ちや魂が入っていると、それが相手にも伝わる。逆にただしゃべっているだけ、覚えたことを話しているだけだと相手の心に残らない。

宇野のチヌは、晴れの日、下側から空を背景にして写真を撮るとチヌが海の中を元気よく泳いでいるように見える。オススメの写真の撮り方だ。

エコ・アートの鬼才、淀川テクニックさんの真庭のシシ。とぼけた顔の表情が絶妙。目の鍋のフタがポイントだと思う。

🔷犬島

この日は、家プロジェクトのC邸が閉鎖されていた。夏会期は作品の入れ替えがあるらしい。I邸を抜けた海岸近くにある浅井祐介さんの作品を鑑賞。A邸前では、お爺さんが飼っているコイを見せて頂いた。これも一種のサプライズで参加者の方、特に海外の方が喜ばれた。

家プロジェクトの作品を廻っている際に偶然出会う猫やトカゲ、糸トンボ、トンビなど、作品ではなく意外なところで強い関心を示す方が毎回いらっしゃる点も面白い。

特別感を出すサプライズを含め、エンターテイメント性をいかに演出し、参加者の方にいかに非日常感を感じてもらえるかがツアーの満足度に繋がる。非日常感、ワクワク、ドキドキがツアーのキーワードだと思う。とにかく支払った値段以上の満足感を十分に感じて頂ければ口コミやSNSを通して集客に繋がっていくだろうし、リピーターも増えていくだろう。ガイド自身がお金を払ってもう一度参加したいと思えるようなツアーにすることがガイドの役割でもある。

犬島精錬所跡。犬島精錬所美術館は、遺構、建築、アート、環境をテーマにしている美術館。

からみレンガを使った壁。からみレンガは、銅の精製過程で出る副産物のスラグで作ったレンガ。

チャーター船の後方から撮った瀬戸内海。晴れの日は、デッキで瀬戸内の多島美を楽しむ方も多い。参加者の方にいかに非日常感を感じてもらうかが顧客満足度に大きく影響する。

🔷瀬戸内海にはいくつ島があるのか?

瀬戸内海で外周が0.1Km以上の島の数は727。(昭和61年 海上保安庁調査)

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