(2) 4技能を磨く:
「実践を通して身に付けた英語力が一番役に立つ。体で覚える。」
- インプット編 「アウトプットを意識したインプット」
Outputを意識したInputを常に心がける。
実際のビジネスの現場を意識する。
現場では、何度も聞き返せないし、数字の聞き違いなどはビジネスにおいて致命傷となる。
(1) リスニングについて:
なぜ聞き取りができないのか?
話者が話す英語を正確に聴き取る能力は言うまでもなく英語でのコミュニケーションに必要不可欠な能力である。
日本人に多いのが、日本語にはなくて英語にはある母音、子音の聞き分けが正確にできないという問題である。
代表的なものを例に挙げれば、母音(16個、下記))、子音(RとL、BとV、SとTHの音の聞き分け等)である。
英語の母音16個:
ʌ ア 勢いのあるア
æ ア 喉の奥を締め付ける
ɚ アー 舌を浮かせる
ai アィ アにイを付ける
au アゥ アにウを付ける
ά アォ 口を縦に開けてオを混ぜる
i イ 日本語のイ
i: イー 唇を横に引く
u ウ 唇を出す
u: ウー 大きく唇を出す
e エ 日本語のエ
ei エィ エからイに移動
ɔi オィ オにイを付ける
ou オゥ オにウを付ける
ɔ: オォ 口は縦で舌を引く
ə ァィゥェォ すべての中間で弱音
これらの音を正確に聞き分けられないと誤って内容を理解してしまうことが起こる。
例えば、英文の中で、「ライト」という音を聞いた場合、文脈と照らし合わせて、自分なりにRIGHT、あるいはLIGHTと推測している場合である。
聞き取りができない原因:
A,母音、子音の聞き分け
その他、聴き取りが出来ない理由として次のことが挙げられる。
B,背景知識の欠如
C,口語独特の言い回しに慣れていない
D,イディオム、成句を知らない
E,速読力不足
F,受験勉強の弊害で日本語の語順に直さないと理解できない(返り読みの癖)
G,英語の音の法則に慣れていない
以下に、これらの問題点に対する対策と役に立つと思われる教材をいくつか挙げておきます。
A,子音、母音の聞き分け:
(対策)
その昔、数十年前のはなしであるが、作者が大学生だった頃、この子音と母音の聞き分け訓練をしようとして、良い教材を探しても見つからず、友人のアメリカ人に頼みこんで、訓練を受けていない一般的な日本人には聞き分けが難しいと思われるLIGHTとRIGHT、SINKとTHINK、VASEとBASEなどの単語を数百個ほどボイスレコーダーに録音してもらって聞き分けの訓練をしたなつかしい思い出がある。
その頃と違って今はこの手の訓練をする教材は豊富に揃っている。自分が使ってみて子音、母音の聞き分け訓練に適していると思う教材のひとつは、講談社から出版されている「完全版 英語リスニング科学的上達法―音韻編―」というCD-ROMと教本がセットになった教材である。
簡単にいうと、例えばCD-ROMから聞こえてくるLIGHTという単語を聴いてLIGHTかRIGHTかを判断、回答するといったプロセスを繰り返し、聞き分けができるまで何度も繰り返し学習するものである。そのほか、スマホのアプリで子音の発音の違いを当てるソフトもある。
その他、英文スクリプト付きの教材を購入し、まず、英文を聴きながらディクテーションを行い、スクリプトと比べて自分が聞き取れていない音をチェックするといった地道な作業も効果がある。
B,背景知識の欠如
(対策)
ニュース等を聴く際、日本語でも英語でもその背景知識があるかないかでその理解度には大きな差が出てくる。
この背景知識は一朝一夕で身に付くものではないから普段から英字新聞サイト、二ヶ国語放送ニュース等を通して、国際政治、経済に関する知識を蓄積しておく必要がある。
C,口語独特の言い回しに慣れていない
(対策)
自分がこれまで試してきて効果があった方法は、自分の好きな映画をDVDプレーヤーで字幕を英語に設定して、楽しみながら観るといった方法である。
ニュースやスピーチといった比較的堅い表現ではなく日常会話において使用されるくだけた表現に慣れるのには最善の学習法だと言える。
可能なら、数回、同じ映画を観たあと、映画の台詞を録音し、場面設定を思い出しながら、どのような場面でどのような言葉が使われているかを意識しながら聴く。
この勉強法はアウトプットを意識したインプットであり、同じような場面に自分が遭遇したときに使うことができる言い回しのストックを増やす目的もある。
D,イディオム、成句を知らない
(対策)
この問題はとにかくイディオム、成句を出来る限り多く覚えるのが得策と言える。
読んで意味が分かるだけでなく、聴いて意味がすぐに出てくるレベルまで体に染み込ませる必要がある。
また、米国人がよく引用する聖書や大統領就任演説等に慣れ親しんでおくことも読解、聴解の助けとなる。
E,速読力不足
(対策)
当然のことながら、自分が英文を読んで理解できるスピード以上の速度で英文が話されても理解できない。
つまり、速読力と聴解力は比例関係にある。
聴解力を伸ばそうとするなら速読、速解の訓練は必須である。
では英文を速く読んで理解するためにはどうすればよいか?
日本語を読む場合を考えてみればよいと思うが、まず第一に英語は英語の語順で読んで理解できること。つまり、英文を頭ごなしにどんどん読む進めることが必要である。
第二に単語力。例えばひとつの新聞記事を読んでいて、キーワードとなる単語の意味が分からないと理解度は当然ながら相当落ちる。
また、文脈から単語の意味を予測しながら読むことになるため、読む速度も減速する。
株価の記事を読んでいてStock、Share、Capital gainsなどの単語の意味を知っているのと知らないのでは理解度に雲泥の差が出てくる。
F,受験勉強の弊害で日本語の語順に直さないと理解できない(返り読みの癖)
(対策)
英語で話されるスピーチであれニュースであれ、日本語の語順に直さないと理解できないというレベルでは、話者とのコミュニケーションは成り立たない。
では、日本語の語順に直さずに頭ごなしに読み進めるにはどうすればよいか?
書店で入手できる書籍の中で、この頭ごなし訳の練習に役立つと思う入門書は、柴田バネッサ著の「はじめてのウィスパリング同時通訳」である。
始めは比較的簡単な短い英文からはじめて、徐々に、内容の難しい長文に挑戦していけばよいと思う。同書籍には多くの頭ごなし訳の訳出法が紹介されている。
(例)
He went to a supermarket to buy some milk.
返り読みの訳; ”彼は牛乳を買うためにスーパーマーケットに行きました。”
頭ごなし訳; ”彼はスーパーマーケットに行きました。それは、牛乳を買うためです。”
G,英語の音の法則に慣れていない
(対策)英語の音の法則を知り、繰り返し英文を聞いて慣れる。
1、音の連結(リエゾン;liaison);
「子音で終わる単語+母音で始まる単語」の場合、つながって発音される。
(例)
an hour ―> 「アナワ」に聞こえる
when I ―> 「ウェナイ」に聞こえる
look at ―> 「ルッケッ」に聞こえる
come on ―> 「カミン」に聞こえる
cheer up ―> 「チェラッ」に聞こえる
2、音の脱落(Elision);
破裂音「p」「b」「t」「d」「k」「g」などで終わる単語が速く発音されると殆ど聞こえない。
(例)
jump, big, wait, good, kick 等
big dog 「ビッドッ」
hot day 「ホッディ」
I want to 「アイ ウァン トゥ」
->会話では「アイウァナ」と聞こえる
good night 「グッナイ」
同じ音や似た音がつながった時、どちらか一方の音を発音しない、または、非常に弱く発音する
(例)
take care 「テイケア」
人称代名詞が速く発音されると音が脱落する。
(例)
his 「~イズ」
him 「~イム」
her 「~ア」
them 「~エム」
their 「~エァ」
3、音の変化、同化(Assimilation);
「t」「d」「s」「z」の子音で終わる単語+「y」で始まる単語の場合、2つが組み合わさって別の音に変化する。
(例)
could you 「クッジュ-」
meet you 「ミーチゥー」
and you 「エンジュ-」
did you 「ディジゥー」
4、その他
-al, -el, -il, -leで終わる単語は「オー」に聞こえる
(例)
travel 「チゥラヴォー」
April 「エイプロー」
tingle 「ティンゴー」
聴き取りのポイント:
A、 英文を聴く際、まず、意識して文章の骨格である S+Vをつかむ。あとは、修飾語や説明することばの羅列にすぎない。
つまり、なにが(主語)がどうした(述語)をまず、理解することが重要。その他の文型はS+Vの応用にすぎない。S+V+O=>なにが、なにを、どうした。S+V+C=>なにが、どうだ(C)。
B、 論旨の展開を追う (英語のロジックに慣れる)
英語の論理の展開と日本語のそれとでは違いがある。この違いを知っておくと英文を読む際、聴く際、また、自分が書く、話す際にもかなり役立つ。
論理的、合理的な言語である英語では、一番重要であること、つまり、結論を先に言い、その後、説明、理由を述べていく、など、普段から、多くのスピーチ原稿を読んで、その特色、論理の展開に慣れておく必要がある。
ニューステロップメソッド:
これは、英文を聴いて、映画の英語字幕やニュース番組のテロップの如く、自分の頭の中で英文テロップを作り、流す方法である。
この方法により、自分が聞き取れていない言葉を発見するとともに、速解力を養うことができる。また、通訳する際に必要となってくるリテンション力(記憶保持力)を養うことができる。
ただし、高度なリスニング能力と多大な集中力が必要となってくる。最初はスクリプト付きの教材を購入し、デクテーションから始めるのがよいでしょう。
結局、なにごとにもいえることですが、多くの労力を伴う方法が一番自分の身につくのではないでしょうか。
■作者の体験談:
中学1年(13歳)のときに初めて英語を学び始めてから数十年になる。これまで、いろいろな方法を試みてきたが自分の体験から最善かつ最も効果のあった学習法といえるのはシャドーイングである。
非常にシンプルであるが、それが結論である。
現在は同じ方法で中国語の学習も行っている。 スマホあるいはMP3プレーヤーがあればいつでも、どこでも実行できる簡単かつ効果的な学習法である。ここで自分のシャドーイング学習法を紹介する。
(準備するもの)
ハード:
スマホ or MP3プレーヤー
ソフト:
CD教材、映画のせりふ、ニュースなどの自分が学習したいMP3
(自分流学習法)
自分の場合、まずCD教材をMP3に変換し、スマホにダウンロードする。 そして下記のようなトレーニングをしている。
(1) 音声を聞く(インプット)際に音声とほぼ同時に、英文をフォローする、慣れてくれば音声から少し遅れて繰り返す(アウトプット)。
家の中にいるときは声に出して、外出中は声に出さずに口だけ動かして音声を繰り返す(サイレントシャドーイング)。
(2) 音声を繰り返すと同時に意味もとらえる。
(3) 音声だけを聞いて口に出さずに頭の中でニューステロップを流すがごとく聞こえてきた音声を頭の中で文字化する。
(4) 聞き取りできなかった(文字化できなかった)単語、文章及び意味が不明であった箇所をスクリプトで確認。
(5) 上記を何度も繰り返す。 内容がおもしろくないと飽きがくるので自分の場合は好きな映画を録音するか関心がある時事問題やYOUTUBEのTEDなどを教材として使っている。 学習というより楽しく趣味としておこなっている。
それだけである。
自分は、疲れているときなどは声に出さず、口だけ動かして、意味も考えず ただ単に頭の中に聞こえてきた音声の文字化のみをおこなっている。 それだけでも効果があるような気がする。
(効果)
リスニング:単に音声を聞き流しているときに比べ、聞き取れないと声に発することができないため、音声に対する集中度が高まり、聴解力が伸びる。
リーディング: 頭の中でニューステロップを流すがごとく頭の中で文字化し、意味を捉えるので速読の練習になる。
スピーキング: ネイティブスピーカーの物まねをしていることになり発音、イントネーションの矯正になる。 映画のせりふを教材に使うと日常会話でよく使われる言い回しを声に出して繰り返すことにより口に覚えさせることができる。 スピーチを教材に使えば間の取り方、演説によく使うフレーズを口に覚えさせることができる。
ライティング: 頭の中に写真を現像するがごとくニューステロップを頭の中に焼き付けることによって英語を書く際、文章化の助けになる。